特集

あの人の作業机​​ vol.40 キャンドル作家・徒然candle

作り手が日々向き合う机の上には、こだわりの道具たちが所狭しと並んでいます。気になるクリエイターのみなさんにお声がけし、作業机や作業部屋を見せていただくことに。今回は、「特別じゃない日も灯したくなる、灯すとすこしだけ特別な日になる」そんなキャンドルを手がける徒然candleさんの机です。次にここから生まれるのは、どんな作品でしょうか。

徒然candle
日常を小さく灯せるような作品づくりを心がけて「特別じゃない日も灯したくなる、灯すと少しだけ特別な日になる」キャンドルを制作。
https://minne.com/@tsuredzure

時間や気分に合わせて作業場所を変える

こちらの作業台は少し特徴的な形をしていますね。

徒然candle
実は天板が机として使えるようにリメイクされている、アンティークのミシン台なんです。

キャンドル作家さんなのにミシン台とは驚きです。

徒然candle
まだ息子が生まれて間もない頃、スタイや服など身の回りのものを自分で手づくりしてみたいと思っていた際に、ミシン台としてなにか良いものがないかと購入したんです。
ですが、キャンドルを始めた頃にはもうミシンを触ることもほとんど無くなっていたので、今度はキャンドルの作業台として使用することにしました。

徒然candle
自宅の一室で作業しているのですが、ミシン台の下にはローラーが付いているので、気分に合わせて部屋の場所を移動したりして使用しています。

今は窓際に作業机がありますが、こちらが定位置のような場所なのでしょうか。

徒然candle
毎日たくさんの蝋を溶かしているので、基本的には換気がしやすい窓際を選んで作業しています。
ジェルキャンドルの作品が多いので、なるべく作品にホコリが付着したりしないよう、家の中の掃除も必ず棚や壁まで念入りに水拭きをしてから制作を開始します。

窓から見える情景や音を大切に

作業部屋で特にお気に入りのものはなんですか?

徒然candle
「もの」と言えるかはわかりませんが、窓から見える景色や聴こえてくる音たちが作業する空間でいちばんのお気に入りでしょうか。

だいたい南側か西側の窓際で作業しているのですが、春先には部屋の中にいてもウグイスの声が聴こえてきたりします。
南側は木漏れ日の光が心地よく、鳥たちが緑の中から清らかな声を聴かせてくれるのでよく晴れた日にはそちらを選んだり。

季節や天気によってお気に入りの場所も変わってくるんですね。

徒然candle
そうですね。夕方になってだんだん太陽が傾いてくるとわたしも西側の窓の方に移動して、夕日を眺めながら制作し、その日の薄明の空を見届けます。このルーティンがとっても心地いいんです。

以前「新作おしえて」の取材をした際にも空のお話を教えていただきましたね。

徒然candle
はい。制作しながらも夜に変化していくまでの空をよく眺めているので、やっぱり新作をアップする時間はこの景色とともに、と思いました。
季節によって毎回時間はばらばらになってしまいますし、必ず晴れている訳でもないのですが、その瞬間に窓から見える情景を大切にしています。

1日の中で気持ちの切り替えを

全体を見渡してもとてもすっきりとしたお部屋ですね。なにか整理整頓術などあれば教えてください。

徒然candle
ものが多いのがあまり好きではないのと、収納スペースが少ないのでなるべく必要最小限で、制作するうえでも資材置き部屋からその日作業する部屋まで、毎日机やそのときに必要なものだけを運び出して作業しています。
その日に使う材料と道具だけを揃えるので、机の上はすっきりとしていて制作の効率は良くなっているのかなと思いますね。

日当たりの良い部屋で作業したいこともあってこうなってしまったのですが、自宅での作業なので同じ空間でも仕事とプライベートで気持ちを切り替えるために、すこし面倒ですがこの移動は毎回行っています。

お部屋にメリハリをつけているような感覚でしょうか。

徒然candle
そうですね。昔から何事も熱中するとつい限界までやり過ぎて疲れてしまうことが多かったので、これがスイッチの切り替えになっていて。
毎日、日が暮れたら作業机も一緒に元の部屋へ戻して、家族との時間も大切にしながら休むときはしっかり休むようにしたら、目の前の感動やときめきを素直に感じることができました。
今はそのリラックスしているときに感じたことを制作に活かすことができています。

道具からも物語を連想する

作業机にいつも置いている「スタメン」のようなアイテムはありますか?

徒然candle
作業机の近くにはいつもBluetoothスピーカーと、お茶を置いています。
スピーカーはもう何年も使っているうえに歯がはえたての頃の息子にかじられた名残が残っていますが、スマホから直接聴くよりも音が良いので、すこし耳がさみしいときはスピーカーで好きな音楽やラジオを流します。

音楽やラジオから影響されることもあるのでしょうか。

徒然candle
そうですね。聴きながら歌詞の意味や情景を思い浮かべたり、ラジオもお話をされているときの言い回しに感心したり。それが次の制作のヒントになったりすることもあります。

徒然candle
お茶は昔はコーヒーが大好きだったんですが、今はカフェインの入っていないハーブティーやルイボスティーを、ティーウォーマーを使って飲んでいます。
ティーライトキャンドルのやさしい灯りといつまでも温かいお茶が、制作中もほっとするひとときを与えてくれます。

徒然candle
ちなみによくお客さまにも聞かれるんですが、撮影のときに使用しているガラスのプレートは千葉の九十九里に工房があるスガハラガラスさんのものです。
ガラスの食器や花器を購入し、お気に入りを日々使用して職人技にときめいています。

制作に使用する道具は普段どのように選ばれていますか?

徒然candle
特別なものは使用せずに身近にあるものや、道具から作品の物語が連想できるようなアイテムを選んだりします。

キャンドルで使う道具は、基本的に身近で揃えられるので特別なものはあまりないのですが、以前特殊メイクで有名なアーティストの方が、日常にあるものをなんでも使うと話していたのを見たことがあって。

特殊メイクというと、なかなか想像がつきませんがどんなものを活用されていたんですか?

徒然candle
かさぶたをつくるのにお煎餅を砕いて使ったり、老けた肌の質感にレモンやオレンジの皮を使ったり。わたしたちが普段何気なく食べたり見ているものをたくさん活用されていたんです。
そこからわたしもキャンドル専用の資材ではないものも、いろいろと試してみるようになりました。
左官職人さんのコテの使い方だとか、アート作品の筆の使い方をみて作品づくりに応用できそうと思ったら使ってみたりしています。

実際にキャンドル専用の資材ではないものでつくった作品をご紹介いただきました。

徒然candle
新作の【記憶の欠片】は、かっぱ橋を訪れた際に、たまたまパズルのクッキー型をみて、忘れていた記憶が埋められていくような光景を思い浮かべました。
そこで、"そういえばギリシャ神話にもそんなお話があったような..."と、道具からインスピレーションを得てつくっていった作品です。

最後に、作品制作で大切にしていることをうかがいました。

徒然candle
四季折々の風景や自ら経験した感動だったりを切り取って形にすること。灯した姿や見た目からも物語を感じたり、または物語を読んで灯す姿を見てみたくなったり。作品と言葉が対になって、見た方に同じ感動を与えられたらなと思っています。

わたし自身もきっと自分が経験した感動を誰かと共有したいという想いで制作を続けているので、作品を通じて何かを感じていただけたり、日常のふとした瞬間に思い出して、友人や恋人、お子さまや家族だったりと一緒に、他愛のない会話のひとつになったり、どこかで心を動かすきっかけがつくれたらなと思っています。

そのためにもこれからもいろんな物事に触れて、感動の気持ちを言葉や形にできるよう励んでいきたいです。

ショップを見る
 
取材・文/中村瑛美里

今後もminneとものづくりとでは、みなさんの「作業机」を募集しております。「#わたしの作業机」(「#minneとものづくりと」をお忘れなく!)の投稿をお待ちしております。

「minneとものづくりと」の更新情報や募集情報はこちらをチェック
minneとものづくりと公式アカウント